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​バセドウ病

どんな病気?

通常、甲状腺刺激ホルモンは、甲状腺の濾胞細胞にある甲状腺刺激ホルモン受容体 (TSHレセプター)に結合して甲状腺ホルモンの分泌を促す指令を出しています。

ところがバセドウ病では、患者自身のリンパ球からTSHと似た構造を持つ“抗TSH受容体抗体”(TRAb: TSH receptor antibody)と呼ばれる自己抗体が分泌され、これがTSHレセプターと結合して甲状腺ホルモンを分泌するように指令を出します。

 

こうして分泌された甲状腺ホルモンは、下垂体にネガティブ・フィードバックをかけ、本物の甲状腺刺激ホルモンはほとんど分泌されなくなります。しかし、抗TSH受容体抗体(TRAb)はそれらの監督下にないため、際限なく甲状腺ホルモンは分泌され、甲状腺機能亢進状態に陥ります。これがバセドウ病です。

症状

症状としては、甲状腺腫大、眼球突出(甲状腺眼症)、頻脈、発汗過多、体重減少、手の震えなどがあります。

治療法

症状の多くは、甲状腺ホルモン過剰によるものなので、まずは甲状腺ホルモンを減らす事を目指します。甲状腺にブレーキをかけるか、甲状腺が無くなってしまえば、甲状腺ホルモンを下げる事ができます。つまり、以下の(1)〜(3)の治療方法です。

(1)薬(メルカゾールやチウラジールなどの抗甲状腺薬)を定期的に服用して、甲状腺ホルモンの合成にブレーキをかける「機能抑制療法」

  • 適応:ほとんどのバセドウ病患者

  • メリット:手軽。手術の合併症やアイソトープ治療のような被曝が無い。

  • デメリット:副作用の可能性(かゆみ、じんましん、肝障害、無顆粒球症(0.1%)、ANCA関連血管炎)。

  • 予後:1.5年〜2年間服用し、30%〜50%の人が服用不要となったという報告があります。

  薬を中断できても(寛解)、また再発する可能性があります。

(2)手術で甲状腺を取ってしまう「手術療法」

  • 適応:内服治療で副作用の出た方。内服治療を長期受けても治らない方。内服治療を一度中断できたが再発した方。早期に妊娠を計画している方(早期にTRAbを下げたい)。甲状腺があまりに大きい方。

  • 不適応:手術のデメリットに了承されない方。

  • メリット:再発のリスクはほぼ無い。早期にTRAbを下げられる可能性大。確実に治療できる。

(3)放射性物質で甲状腺を縮める「アイソトープ内服治療」

  • 適応:長期に内服治療を受けても安定しない方。内服治療で副作用が出た方。内服治療を一度中断できたが再発した方。

  • 不適応:近いうちに妊娠を考えている或いは妊娠中の方、授乳中の方、18歳以下の方。甲状腺があまりに大きい方。活動性の眼症状がある方。

  • メリット:内服薬にあるような副作用がない。

  • デメリット:放射線被曝するため避妊が必要。

よく頂く質問

「手術やアイソトープ治療を受けて甲状腺機能が落ちてしまうと、甲状腺ホルモンを生涯に渡り服用しなければならないと知りました。ずっと薬を飲み続ける点では、メルカゾールやチウラジール服用を続ける事と変わりないような気がしますが?」

A:

  • 甲状腺ホルモン剤は副作用が滅多に無く、メルカゾールやチウラジールに比べ安全、かつ安価です。

  • 必要な甲状腺ホルモン剤の量が決まれば、その後はほとんどが安定します。メルカゾールやチウラジールでの治療では、改善、悪化を繰り返すので、数か月に1度は血液検査をして薬の量を調整しなければなりません。

  • 非妊娠時にはメルカゾールが第一選択薬となりますが、妊娠を考慮した場合、妊娠初期のメルカゾール使用は新生児に頭皮欠損、気管食道瘻、後鼻孔閉鎖、臍帯ヘルニアなどの奇形と関連が強い事が報告されています。以上から、メルカゾール服用中に妊娠したら、妊娠判明時から妊娠15週までは、メルカゾール服用を中止しなければなりません。授乳中は、メルカゾール服用は1日2錠までなら良いとされています。甲状腺ホルモン剤は妊娠中も授乳中も安全に服用できます。

 

 




 

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