甲状腺ホルモンについて

前回の「甲状腺とは」では、甲状腺が首の前方に存在する事や、甲状腺ホルモンの働きについて記しました。

今回は、甲状腺ホルモンについて、書いていきたいと思います。

先に言っておきます、今回は長いです。そして難しいです。

次回以降でいろいろな例え話を出していきますので、今回分はお許しを。

(1)甲状腺は、甲状腺ホルモンを作って蓄えている小さな小さな袋が集まったもの

(2)甲状腺ホルモンの原材料として大切なヨウ素。

(3)ヨウ素とアミノ酸(チロシン)がくっついて甲状腺ホルモンができる

(4)血液中では、タンパク質にくっついた甲状腺ホルモンと、タンパク質にくっつかないフリーな甲状腺ホルモンが存在する

(5)いろんな臓器に甲状腺ホルモンを安定供給するための仕組み

上記(1)から(5)について記していきます。



(1)甲状腺は、甲状腺ホルモンを作って蓄えている小さな小さな袋が集まったもの

甲状腺ホルモンとは、文字通り甲状腺から分泌されるホルモンです。

甲状腺は、細胞が一列に並んで作られた小さな小さな袋が集まったもの(濾胞と呼びます)で、それらの袋で甲状腺ホルモンは作られ、貯蔵されます。

甲状腺濾胞をテニスボールに例えてみます。テニスボールの黄色のフェルトの部分が、一列に並んだ甲状腺の細胞たち、内部の空洞の部分が濾胞の内部という感じです。


(2)甲状腺ホルモンの原材料として大切なヨウ素。

食物中に含まれているヨウ素の化合物を食べて吸収されると、血液中で無機ヨウ素(化合物ではなく、ヨウ素そのもの)となり、甲状腺に取り込まれます。この無機ヨウ素は小さな袋の表面に存在する細胞を通る時に「酸化」され、甲状腺の内部で貯蔵されます。貯蔵の時も甲状腺ホルモンを作る時も、サイログロブリンというタンパク質が必要となります。濾胞の中は、サイログロブリンで満たされています。サイログロブリンという言葉は、サイロ(甲状腺の)という言葉とグロブリン(タンパク)という言葉が合体した言葉です。甲状腺特有のタンパクと言い換えても良いです。


(3)ヨウ素とアミノ酸(チロシン)がくっついて甲状腺ホルモンができる

サイログロブリンはチロシンというアミノ酸を多数含んでいて、そのチロシン(T)にヨウ素がくっつく事で甲状腺ホルモンは誕生します。

なんだ、また出てきましたよ、カタカナ、チロシン。納豆の表面に白いジャリジャリしたものに気付いたことないですか?あれ、チロシンです。

チロシン(T)にヨウ素が3つくっついたものを、T3と呼び、

チロシン(T)にヨウ素が4つくっついたものを、T4と呼びます。


甲状腺に病気があって、定期的に血液検査を受けている方にとって、やっと見慣れた文字が出てきましたね。T3T4です。

もう少し頑張って。


まだ、甲状腺濾胞(テニスボール一つ)の中での話です。サイログロブリンに存在するチロシンにヨウ素が3つくっついたT3、ヨウ素が4つくっついたT4は、最終的にサイログロブリンから切り離されて、T3あるいはT4として甲状腺の外(血中)に放出されます。この時、甲状腺から出てくるT3とT4の量は同じではなく、90%以上がT4で、T3はわずかです。


(4)血液中では、タンパク質にくっついた甲状腺ホルモンと、タンパク質にくっつかないフリーな甲状腺ホルモンが存在する

さあ、ここからは血液の中での話となります。テニスボールの中から飛び出していきましょう。

T4T3ですが、これまた血液中ではそのほとんどがタンパク質と結合しています。

血液の中で、タンパク質と結合していない甲状腺ホルモンは一部であり、これを遊離(フリー)ホルモンと呼びます。タンパク質にくっついていないT4はFree T4 (フリーティーフォー F T4)、同じくタンパク質にくっついていないT3をFree T3 (フリーティースリー F T3)と呼びます。

ああ、やっと、F T4 と F T3まで来ました!


じゃあ、血液中に存在する全てのT4(総T4)のうち、フリーなT4(F T4)はどれくらいなの?という疑問が浮かびませんか?なんと、0.04%です。

そして、フリーなT3(FT3)は総T3の0.4%です。

それで、重要な事は、ホルモンとして働くのが、このわずかなフリーなホルモンという事と、FT 4は前段階のもので、F T3(T3)が最終産物という事です。


もう少しもう少し。

F T4F T3、どうして二つ必要なのか?です。

心臓に届いて心拍数を増やしたりと、違う場所に行って信号として直接働くのは、T3なんです。

じゃあ、たくさん存在するT4は何をしているかというと、T4は肝臓や腎臓などの部位でわざわざT3に変えられて、利用されています。


いやあ、周りくどいことをしますね。

なぜT4を血中に存在させるのか。信号として仕事をするT3だけを作ればいいじゃないかと思ってしまいますね。


(5)いろんな臓器に甲状腺ホルモンを安定供給するための仕組み

もしも、血中にT3だけしか存在しないとなると、一体どうなるでしょう。

T3を受け取る体内のいろいろな臓器は、T3の濃度にダイレクトに影響を受けます。

甲状腺がT3を少しでもたくさん作ると血液中のT3の量がすぐに増えて心拍数は速くなりますし、少しでも減ってしまうと心拍数は遅くなる。体調がガタガタになります。

そこで、ターゲットとなる臓器が、なるべく一定量のT3を受け取れるようにするためのシステムとして、T3の前駆段階のT4が豊富に存在し、血液中でも貯蔵しておくために結合タンパクが存在しています。


よくできているなあと、感心させられます。


しかしこういうシステム、実社会でもみられます。次回、そちらについて記してみますね。


※不思議なのは、チロシンは化学では略号TyrあるいはYなのに、なぜY3やY4にならなかったのか。なぜTyr3あるいはTyr4にならなかったのか・・・。また勉強しておきます。


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