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5月25日は「世界甲状腺デー」

今日5月25日は「世界甲状腺デー」です。

甲状腺疾患に関して一般人の方に広く知ってもらう事を目的として、2008年に欧州甲状腺学会(ETA)が5月25日を世界甲状腺デーに制定しました。


そもそも、5月25日に何があったのか。

1880年頃、甲状腺の摘出手術を受けた方々が、独特の状態に変化することがわかっていました。浮腫む、動きが遅い、舌が分厚いなどです。これを、当時はMyxoedema(粘液水腫)、cachexia strumipriva(甲状腺摘出後悪液質)と呼んでいました。今から考えれば甲状腺機能低下症なんですが、当時は今のように甲状腺ホルモンの測定ができなかったので、そのように呼ばれていました。

1888年の5月25日、ロンドン臨床医協会が、上記のような粘液水腫、甲状腺摘出後悪液質が生じる事は(甲状腺摘出後でなくても、同様な症状の人々がいるという事はわかっていた)、甲状腺が失われた事で生じるという事を発表しました。


治療については、当然、「甲状腺を移植、あるいは甲状腺の抽出物の投与を、粘液水腫、甲状腺摘出後悪液質の患者に施せば治るのではないか?」という仮説に至ります。


甲状腺ホルモン投与の代表例は、1891年7月のGeorge R. Murray (1865–1939)の報告が挙げられます。

彼は、粘液水腫、甲状腺摘出後悪液質の一人の女性患者の皮下に、羊の甲状腺から抽出した「液」を注射しました。すると、患者の症状が改善されたのでした。彼は当時まだ26歳。この業績は、テオドール・コッヘルが1909年にノーベル生理・医学賞を受賞した時の講演でも紹介されており、そこでは「thyroid juice」という言葉が用いられています。


今や錠剤(チラーヂンS)で補充できるようになっていますが、薬って本当に素晴らしいし有難いですね。 文献:

The Endocrinologist 11(1):p 1-3, January 2001. Sawin, Clark T. M.D.

Nobel Lecture, December 11, 1909 Concerning Pathological Manifestations in Low-Grade Thyroid Diseases. Theodor Kocher.

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