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糖尿病と心筋梗塞の関係について


医者3年目の頃、糖尿病内科の研修医だったにもかかわらず、循環器内科の先生に心臓治療の指導をいただける機会に恵まれました。

カテーテル治療は、冠動脈造影で狭くなった冠動脈をバルーンで拡げ、ステントを留置する大切な治療です。


私が心筋梗塞や狭心症を勉強したかった理由、それは、糖尿病があるだけで心筋梗塞になりやすいという、今回紹介します1998年に発表された、フィンランドの研究グループの報告がきっかけでした。

どのような研究かというと、糖尿病がある人と無い人の、心筋梗塞の発症率を比較した研究です。


研究対象は非糖尿病の人が1373名、糖尿病の人が1059名です。

追跡開始時点では、糖尿病がない人々1373名のうち、過去に心筋梗塞に罹った事がない人は69名、心筋梗塞に罹った事のある人は1304名でした。

糖尿病がある人1059名のうち、過去に心筋梗塞を罹った事がない人は169名で、心筋梗塞に罹った事のある方は、890名でした。


上記の合計約2400人を7年間追跡し、どれくらいの人が心筋梗塞になるのかを調べる研究です。


結果は、非糖尿病で心筋梗塞にかかった事がない人69名のうち3.5%が、糖尿病がある人169名のうち20.2%が初めて心筋梗塞を発症しました。この結果から、糖尿病がある人は、糖尿病が無い人に比べて、心筋梗塞になりやすいという事が言えそうです。



心筋梗塞は1回発症すると再発する可能性のある病気です。

この研究でも、非糖尿病の人のうち過去に1度心筋梗塞になった方が再度心筋梗塞になってしまうのは20%の人々であるという事も示されています。

私がこの研究を知って最も驚いたのは、非糖尿病の方の心筋梗塞の再発症率(18.8%)と、糖尿病の方がはじめて心筋梗塞にかかる確率(20.2%)が同等であるという点でした。


心筋梗塞の症状として胸痛が代表的ですが、糖尿病により感覚が鈍磨してしまっていると、その胸痛さえ鈍くなってしまっている場合があります。

以上の理由から、はじめて来院された糖尿病患者さんには、症状がなくても心電図検査を受けていただき、心筋梗塞の痕跡があるかを調べておく事を推奨しています。

さらに、このブログを読まれている方の中には、私から「走ったり階段を上がったりしたとき、胸の痛みや圧迫感は起きませんか?」と質問を受けられた方もおられるかも知れませんが、これは労作性狭心症が無いかを確認するための質問なのです。



Mortality from Coronary Heart Disease in Subjects with Type 2 Diabetes and in Nondiabetic Subjects with and without Prior Myocardial Infarction

N Engl J Med 1998; 339:229-234

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